本研究は、富士山の亜高山帯上部に注目し、樹木限界から森林限界にいたる移行帯における植物群落の動態と、それに及ぼす気候・地形的諸営力を解明することに目的がある。 富士山は近年まで火山活動が持続したため、斜面ごとに堆積物の年代にバラエティがあり、ここの斜面における植生は、堆積物の新旧やその安定不安定によって直接間接的に影響を受け、遷移系列の違いが明瞭になる。また、斜面による融雪期における雪代による攪乱も大きい。本研究では比較的高標高にまで植生が発達している北西斜面・北斜面における移行帯に特に注目し、群落額的な手法にもとづいて詳細な調査を行いながら、どのような攪乱を受けてきたかを明らかにし、樹木限界付近の群落構造と環境変動とのかかわりを探ろうというものである。 北西斜面2700m、2800m、2900m地点にはすでに地温計を設置して継続観測中であり、この斜面に特有な階段状微地形の形成要因についての一定の見解ができつつある。本年度は、この微地形と植生の遷移過程との関わりについて明らかにすべく、土壌水分の経時的な観測を開始した。階段状微地形の急斜面の上部と下部で大きな水分条件の差があり、植生の定着の度合いに大きく関わっていると予測している。さらに回収済みの地温データの解析を進め、気候値の提示を行う。来年度には、残雪状況の把握と根系の掘削調査を行う予定で準備を進めるとともに、土壌水分計を回収してその解析をする予定である。
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