研究課題/領域番号 |
17500702
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
岡 秀一 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 准教授 (50106605)
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研究分担者 |
菅野 洋光 農業技術研究機構, 東北農業研究センター, チーム長(研究職) (30355276)
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キーワード | 樹木限界 / 群落動態 / 年輪 / 樹高 / 遷移系列 / 強風環境 / 土壌水分 / 富士山 |
研究概要 |
本研究の目的は、富士山の樹木限界における植物群落の動態とそれに及ぼす気候・地形的諸営力を解明することにある。富士山は近年まで火山活動が持続したため、斜面による環境条件の違いが明白であり、様々な斜面による植生構造の把握はその総体としての遷移系列を明らかにするという点からも重要である。本年度は北西斜面に注目し、従来から継続させている地温・気温・土壌水分・日射に関する観測を行うとともに、コドラートを設定して木本植物の毎木調査を行い、生長錐による年輪コアの採取・解析、デンドロテープによる肥大生長量の読み取り・解析を実施した。これらのなかでも特に年輪コアの解析に重点を置き、個体サイズと樹齢の関係についての検討を行った。その結果、北西斜面の森林限界から樹木限界への移行帯では標高が高くなるに従ってサイズが小さくなるが、同一標高帯で見ると若齢個体より高齢個体のほうがサイズが小さくなる傾向のあることが明らかになった。これはパイオニアとして定着した高齢個体の庇護のもとに群落形成が進行中であることを示唆するものである。また、樹高サイズは5mを越すことはなく、加齢によって一定のサイズには減少する。これは、強風に晒される北西斜面に特有の環境条件のなせるわざであろう。したがって、高齢個体の年輪の時系列的解析は環境変動を解明するすべとして有効であると思われ、若齢個体のそれは環境形成作用を反映するものと捉えることができよう。今後、気候観測データの解析に合わせ、年輪幅の解析も鋭意進めたい。
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