研究概要 |
都市において熱環境の形成にかかわる地域特性は都市キャノピー層をマッピングすることで捉えることができる.キャノピー層は都市気候で精緻な数値データで表現することも多いが,データの量が多く,処理効率が悪くなるため,ミクロスケールの研究にしか適用できない. 簡便な方法として,本研究は都市計画での利用を目標に,都市キャノピー層の形状特性を景観生態学の指標で捉え,ラスター・パッチ・クラスタースキーム(RPCS)でその空間構造を都市キャノピーフィーチャー(UCF)として抽出し,衛星熱画像からそれらの温度特性を評価・検証した.RPCSとはラスター型の空間データからパッチ領域を抽出し,地理的に近隣するパッチをクラスターにしてUCFへ抽象化する手法である. 横浜市を対象に2500分の1の土地利用データと建物データから都市キャノピー層の容積指数,ASTER/VNIRとASTER/TIRから植生指数と土壌指数を作成した.そして,RPCSを用いて容積指数・植生指数・土壌指数からそれぞれ高密市街,公園緑地,裸地という3種類のUCFを抽出した.これらのUCFをASTER/TIRに重ね合わせてそれぞれの温度特性を評価した.最後にUCFのキャノピー特性と温度特性を統計的に解析し,局地的なヒートアイランドが形成されるメカニズムを明らかにした. 結論として,都市には密度や形態の異なる市街地が局地的熱環境を形成しており,ASTER/TIRのような中解像度の熱画像によって総体的に捉えることができる.また,局地的なヒートアイランド強度はUCFの面積と顕著な対数関係が確認できた.これは都市の拡大に伴ってヒートアイランドが強くなる現象は都市内部においても成り立ち,ヒートアイランドの制御は都市発展の各段階において行わなければならないことを意味する.
|