研究概要 |
本研究はGISの都市3次元形状データを用いて,地域エコトープごとの熱容量を推計し,それを衛星熱画像の輝度温度データと合わせて,地域全体の熱エネルギー収支を評価する方法を開発し,都市計画の視点からヒートアイランド対策を支援することを目的とした.そのために,都市キャノピー層や都市熱画像の空間構造をエコトープに区分する手法として,ラスター・パッチ・クラスターというスキーム(RPCS)を開発した(厳,2005;2006).これを用いて,都市熱画像から都市サーモフィーチャー(UTF),都市キャノピー層の3D空間構造データから都市キャノピーフィーチャー(UCF)を抽出した.その結果,UTFの大きさとその表面温度ヒートアイランド強度との問に(厳,2006),UCFの大きさとその中の表面温度ヒートアイランド強度(YAN,2007),いずれも強い対数相関がみられた.つまり,都市集積の進行に伴い,都市内部に局地的なヒートアイランドが発達することが確認できた.RPCSによって抽出された低温域は,横浜のような丘陵地域において,裸地・農地・樹林地を主要因としているが,地形による移流効果も無視できないことが衛星熱画像によって,確認された.さらに,緑地の低温効果を定量的に評価するために,東京都23区内の13か所の公園緑地に対し,内外の気温を観測し,その温度差とDSM(数値表面モデル)によって数値化した緑地の3D構造との関係を検証した結果,晴天日において,公園緑地の冷却効果は公園規模・樹冠密度、周辺地域の人工排熱との問に,有意水準0.05,R=0.922の下で重相関が成り立つことが確認できた.これはつまり,公園緑地の冷却ポテンシャルは面積だけでなく,その質(被覆の構成,被覆の密度)も強く影響することが実証できた.これらの知見は都市熱環境の整備において,土地被覆,土地被覆のキャノピー特性,地形条件などの地域特性を複合的に考慮し,それらを活かしたヒートアイランド対策が望まれると言える.
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