研究概要 |
平成18年度の研究では,ArcGIS((株)ESRIジャパン)を使用して,VBAによるArcObjectプログラミングにより,建物の生活関連施設(以下,施設)への近接性を測定するシステムを開発した.ArcGISは,VBAエディタをもっており,その中でArcObjectを利用することによって独自の機能(システム)を開発することができる.システムの内容は,次の通りである.(1)施設(現段階では,コンビニエンスストア(以下,コンビニ)と駅)を指定し,施設ごとに近接性を測定する建物から発生するバッファの距離(半径)を入力する.(2)マウスで施設への近接性を測定する建物を指定する.(3)指定した建物から,(1)で入力した大きさのバッファが発生する.たとえば,コンビニで300m,駅で1,000mを指定したならば,それぞれの半径のバッファが建物を中心として発生し地図上に表示される.(4)実行ボタンをマウスでクリックすると,バッファ内の施設が水色で示されるとともに,バッファ内の施設数を施設ごとに数えて表示し,施設数からみた近接性を測定する.さらに,(5)バッファ内の人口を,町丁目の人口を面積按分して計算する.(6)コンビニでは,バッファ内の人口とバッファ内の店舗の合計面積(規模)を考慮した近接性の得点を計算する.(7)駅とコンビニの近接性の得点から,近接性の総合指数を算出して表示する.これが指定した建物の近接性となり,総合指数が高いほど建物の近接性は良い.このシステムでは,歩行者と車の場合で使用する道路レイヤを替えて,それぞれの近接性を測定することができる.歩行者の場合は幅員が2.5m以下の道路まで入力されたレイヤを,車では車が通行可能な道路や道路属性が入力されたレイヤを使用する. また,建物レベルの近接性の測定を応用した事例として,京都市中心部においてホテルから駅,バス停,観光施設,コンビニへの近接性を測定し,ホテルの評価や立地との関係を分析した.その結果,近接性はホテルの設備やサービスなどの評価因子とは異なり,ランクが低く評価されるホテルほど良かった.また,近接性の良し悪しは,宿泊料金にはほとんど反映されていないことも明らかになった.
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