研究概要 |
(1)イメージングライダーシステムの実証試験と改良:本年度は,イメージングライダー装置の各コンポーネントについて,最終段階の調整および最適化を進めるとともに,イメージインテンシファイア(II)の増幅率など,主要パラメータの計測、確認を行った。検出システムのノイズの主要な原因を明らかにするとともに,大気からの紫外散乱光を検出する効率の向上を図った。イメージングライダーでは通常のライダーに比べて視野が広く,市街地の照明など背景光の影響が大きくなる。しかし,本研究で取り入れたトリガー信号同期システムによるゲート動作によって,背景光の影響を数%以下に減少させることが可能となった。そのほか,6インチIIやゲートII,CCDカメラなど撮像系単体の評価や,遮蔽率,取得画像の不均一性など,検出システムの細部にわたる評価を行った。理論においては,望遠鏡の視野を横切る形でのレーザー光の掃引を行う場合について,幾何学情報に基づく信号の解析法を新たに考案した。 (2)大気エアロゾルと雲の二次元観測:Ashra望遠鏡とUVレーザーを用いたイメージングライダーのバイスタティック観測実験においては,レーザーと望遠鏡との距離(基線長)が15-40mの範囲で平面内観測を行い,受信光強度分布を実際に取得した。その結果,実測データは数値シミュレーションによる予測とよく一致することが明らかになった。晴天時におけるエアロゾル分布の平面内観測において,ゲートIIによる露出時間が1秒という短時間でレーザー光信号を取得することができることからもAshra望遠鏡の高感度特性を確認できた。本年度実施した観測実験を通じ,レーザー光が雲によって多重散乱される様子を実際に捉えることができた。今後の詳細な解析を通じ,イメージングライダーのデータから雲とエアロゾルの相互作用の研究をより一層進展させる。
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