東シナ海近辺上における雲粒核の特性とその役割について平成17年度研究実績の概要: 1.平成17年3月〜4月及び平成17年10月〜平成18年1月に奄美大島北端で雲粒核の特性とその役割に関する観測を行ない、次の結果を見出した:(1)東シナ海近辺上では中国や韓国などからの汚染大気の流入によって、二酸化硫黄や二酸化窒素ガス濃度、黒色炭素(ブラック カーボン)濃度と大気微粒子数濃度が急増し、海洋大気が著しく汚染される。また、これらの人間活動起源大気汚染物質の増加に伴って世界の海域上でも類を見ない高い雲粒核数濃度の状況になりつつある、(2)アジア大陸乾燥地帯からの土壌粒子(黄砂)が大気汚染源上空などを経て、大気汚染物質と同時に東シナ海近辺上に飛来した場合には、大気汚染物質に伴う雲粒核数濃度の増加よりも著しく高い数濃度が観測された、(3)東シナ海近辺上で大気汚染に伴う雲粒核数濃度の急増が下層雲の微物理学的性質に及ぼす影響を究明するため、雲粒核数濃度の変動と人工衛星MODIS資料から導出した雲の光学的有効半径や雲水量の鉛直分布との関係を調べた。その結果、大気汚染物質が数百キロで下層雲の性質に大きな影響を及ぼす可能性がある。 2.東シナ海近辺上で3種類の成分(海塩粒子、非海塩硫酸粒子と溶解性有機粒子)の外部混合状態が異なる大気エアロゾル組成の変化が下層雲の微物理学的・光学的性質に及ぼす影響を数値実験によって調べた。その結果、下層雲の雲粒数濃度と光学的厚さは大気汚染に伴う非海塩硫酸粒子の増加によって増大するが、海塩粒子や有機粒子が混在するとこれらへの影響は多少弱まる可能性を見出した。
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