研究概要 |
南極海では,ナンキョクオキアミをはじめとしてサルパ類やカイアシ類などの大型植食性動物プランクトンが生物量で卓越して分布する.これまでの多くの研究によって,南極海の物質循環に果たすこれら大型植食性動物プランクトンの果たす役割についてはくり返し強調されてきた.しかし,他方,南極海には個体数において大型動物プランクトンをはるかに凌ぐ小型動物プランクトン(たとえば,Oithona属,Oncaea属カイアシ類,尾虫類など)が普遍的に分布しているが,これらの南極海における生態学的な役割についてはほとんどわかっていない.本研究の目的は,南極海における小型および微小動物プランクトンの生態学的な役割を明らかにすることである. 本年度は,以下のフィールド調査と解析を実施した. (1) 南極海インド洋区における小型動物プランクトンの調査 本年度は,「オーロラ・オーストラリス」(第50次日本南極地域観測隊)と「海鷹丸」(東京海洋大学)による南極海インド洋区のリュツォ・ホルム湾沖での小型動物プランクトンの調査を実施した.とりわけ,東経38度線にそって,南緯60度から68度30分に至る開水面域から氷海域での小型動物プランクトンの調査および海洋観測を実施し,多くの資・試料を得た. (2) リュツォ・ホルム湾沖における小型動物プランクトンの解析 昨年度の東京海洋大学練習船「海鷹丸」南極海調査航海で行った南極海インド洋区の西端にあたるリュッツオホルム湾沖で得られた小型動物プランクトンの種組成と生物量の解析を行った.さらに,極地研究所に保管されている標本・資料を用いて,大陸沿岸域での小型動物プランクトンの役割についても解析を行った.リュツォ・ホルム湾沖においても100μmおよび330μm目合で得られた動物プランクトン群集を比較した結果,その現存量は数十倍から100倍異なり,100μmで得られた小型動物プランクトン群集はバイオマスにおいても大型群集に匹敵するものである事が示唆された.
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