初年度である平成17年度は、データ収集、予備実験の試行、ならびに堆積輸送モデルの構築を行った。データに関しては、研究対象である東シナ海周辺海域の6時間ないし2日間隔の各種気象・海象データを2002年から2005年までの期間について集めるとともに、中国の研究機関から三峡ダム運用開始時期である2004年6月を挟んだ数年分の長江・黄河に関する月ごとの流量および堆積輸送量のデータを入手した。収集したデータは新たに導入したデータ解析ソフトを用いて数値モデルの境界条件として使用できる形に編集した。予備実験として、東シナ海陸棚域で卓越する潮流による浮遊堆積物の輸送見積もりを2次元潮汐モデルを用いることにより行った。その結果、朝鮮半島西南部及び中国江蘇省沿岸域では潮汐残差流が毎秒数センチのオーダーに達し、一般流に匹敵する浮遊堆積物の輸送効果を持つことが予想されるため、旧黄河河口や朝鮮半島西岸の河川から供給される細粒堆積物の挙動に関しては潮汐の効果が無視できないことが判明した。さらに本実験で用いる堆積輸送モデルの構築を行った。本年度は、東シナ海を単純化した陸棚地形を対象にして、流動場を計算するための3次元流速場の計算モジュール、浮遊沙質堆積物の輸送モジュール、ならびに掃流砂の輸送・侵食・堆積過程を計算するモジュールの構築を行った。単一粒径で堆積物の供給源も河口1箇所に限った単純なケースにおいて、堆積輸送並びに流動場の各種パラメタに対する依存性を調べた。
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