研究課題/領域番号 |
17510011
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
熊谷 朝臣 九州大学, 大学院・農学研究院, 助手 (50304770)
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研究分担者 |
清水 貴範 森林総合研究所, 九州支所, 研究員 (40353726)
大槻 恭一 九州大学, 大学院・農学研究院, 教授 (80183763)
智和 正明 九州大学, 大学院・農学研究院, 助手 (30380554)
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キーワード | 森林群落 / 流域 / 蒸散 / 樹液流計測 / フラックス |
研究概要 |
樹液流計測によって森林群落レベルの蒸散速度を実際に計測・算定する際、樹体内部・個体間変動に起因する不確実性が障害となる。対象とする樹種、個体サイズ構造、環境条件によって、この不確実性を解消するサンプリング戦略(適正サンプル数)は変わるであろう。そこで、この不確実性を解消する方策を確立することを目的として、まず、平坦地形において比較的均質な個体サイズを持つスギ林分で大量の樹液流計測センサーを用いて、個体内・個体間の樹液流速変動を計測し、その結果を利用したモンテカルロシミュレーションにより適正サンプリング戦略の立案を行った。この結果によれば、個体間の樹液流速変動は予想以上に大きく、12本のサンプル木を用いた計測によっても適正に林分平均樹液流速は得られないことがわかった。一方、個体内の樹液流速変動を適正に評価するためには、6本のサンプル木を用いた計測を行えば十分であることがわかった。 以上で得られたサンプリング戦略をもとに、流域レベルの森林群落蒸散速度を評価するための樹液流計測戦略を立案した。同一流域内に同年齢でありながら全くサイズ構造の異なる2つのスギ林分プロット(尾根プロット・谷プロット)を設定し、大量の樹液流計測センサーを用いて、それぞれの林分辺材面積当り平均樹液流速(Fsap)を算出した。尾根プロット・谷プロットでは、土壌水分条件が全く異なり、個体数密度・個体サイズも全く異なるにも関わらず、Fsapは長期時系列で考えてもほぼ同じ値を示した。2つのプロットでは、総辺材面積が谷プロットで若干大きいため、林分蒸散速度は谷プロットが若干大きい値を示した。この結果は、流域レベルでは、どの林分を取ってもFsapは変わらず、流域レベルで辺材面積分布を得れば、流域蒸散速度が得られる可能性が高いことを示している。
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