研究課題
有明海における赤潮と懸濁物質との関係について調べるために、1997年から2004年までの海色センサーSeaWiFSのクロロフィルaおよび無機懸濁物質量を表すと考えられる555nmの規格化海面射出輝度(nLw555)のデータを収集し、月ごとの複合画像を作成した。その結果、基本的にはこれまでに報告した河川流量の増加に対応した形でのクロロフィルaの増加が観測されたが、一方でクロロフィルaの濃度の増加時にnLw555の値が減少する傾向が見られた。1日ごとのデータの解析では、田中ら(2005)が10月後半の大潮と小潮時に湾奥の干潟付近で報告した、大潮時に濁度が上昇し、小潮時にクロロフィルaの濃度が上昇する傾向が、干潟周辺だけではなく、湾奥部から有明海の広範囲にわたって広がっていたことが明らかとなった。また、有明海湾奥部でFRRFによる光合成活性の定点観測を行い、ここでは懸濁物質量やクロロフィルaだけではなく、光環境や栄養塩環境が潮汐周期によって、大きく変化し、日周性と合わせて光合成活性も変化していることが明らかとなった。また、リモートセンシングと海洋観測データを利用して、有明海と同様に濁りの激しい東シナ海長江河口域で、長江海台付近で季節的に濁りが変動し、秋の寒冷期には濁りとともに栄養塩が底層から表層に供給されており、その周辺の濁りの少ない海域で植物プランクトンが増加する可能性があることを明らかとした。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (2件)
J. Oceanogr. 62
ページ: 37-45
Cont. Shelf Res. 26
ページ: 168-178