本研究では有明海における赤潮と懸濁物質との関係について調べるために、1997年から2004年までの海色センサーSeaWiFSのMLACデータセットによって、クロロフィルaおよび無機懸濁物量を表すと考えられる555nmの規格化海面射出輝度(nLw555)について調べた。有効データ取得頻度を用いることにより、質が悪いと考えられる海岸線近くや迷光などの混入したデータを取り去ることが可能となった。このデータセットを利用して、衛星の有明海全体の平均値の日データと日降水量について、2週間の移動平均値の時系列を比較した。衛星クロロフィルaに関しては、降水の後平均20日間で極大となり、その速さは気温が10度上昇すると1.45倍加速され、その量は降水10mmに4.4μg/l上昇することが明らかとなった。一方、懸濁物質を表すと考えられるnLw555は、降水のピークから平均で10日間以内にピークを迎え、クロロフィルaの前にピークとなることが明らかとなった。大まかにはクロロフィルaとnLw555は逆相関の関係になっていたが、懸濁物質が植物プランクトンの増殖を抑える効果があるかどうかは、今後より詳細な検討が必要であると考えられた。 またリモートセンシングで測定される海面射出輝度は、これまで水中輝度から外挿によって求めていたが、船上から表面反射の影響なく正確に求める手法を開発した。さらに日本の衛星ADOEOS(みどり)-IIに搭載されたセンサーであるグローバルイメージャの海色チャンネルについて、その校正係数を決定し、精度を明らかとした。
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