本研究では、ラジオ波(200-300k Hz)の印加で小型かつ安定なヘリウムプラズマを容易に生成できることに着目し、気体または液体中に存在するppb-pptオーダーの環境汚染物質を高感度・高選択的に検出できる小型原子発光検出(AED)デバイスを開発する。当該年度は、1)検出システムのさらなる高機能化(汎用性の向上および高感度化)、2)インクジェットマイクロチップを用いた極微少量液滴導入法を組み合わせた測定システムの構築を行った。 1)検出システムのさらなる高機能化 前年度開発した同軸二重管型マイクロプラズマトーチよりも絶縁破壊を起こしにくく、かつプラズマと電極が相互作用しにくい構造を有する対向同軸型マイクロプラズマトーチを新たに考案、試作した。このマイクロトーチを内蔵した短い鉛筆ほどの検出デバイスを開発、キャピラリーガスクロマトグラフ(CGC)に搭載し、環境汚染物質として代表的な有機硫黄およびリン化合物の検出特性を評価した。測光系にCCD分光器を用いて印加電力および周波数、プラズマガス流量などを最適化した結果、硫黄については元素量として8pg/sec、リンについては12pg/secとさらなる高感度化に成功した。 2)インクジェットマイクロチップを用いた極微少量液滴導入法を組み合わせた測定システムの構築 インクジェットマイクロチップを試料導入部に搭載したCGC-AEDを測定システムとして試作した。スイッチングバルブを併載し、GC測定時に試料が漏出するのを防ぐとともに、インクジェットマイクロチップの取り外しを可能とした。モデル試料としてチオアニソールを試作した測定システムで元素選択的に検出できることを確認した。
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