研究概要 |
森林群落(カラマツ林とシラカンバ林)においては,森林群落による保護効果により,アラス(融解凹地.耐塩性の草地)にくらべ活動層(季節融解層)が浅くなるといわれてきた。森林群落内の気温はアラスより低くなっていた。しかし、本研究の結果,アラスの湿潤草地における活動層厚は森林とほぼ同じであることが明らかになった。これは,湿潤草地においては土壌水分が多いため,冬期に形成された高含氷率の凍土が融解する際,水分の熱伝導度と潜熱により融解しにくいためであると考えられる。 土壌中の塩分濃度は,カラマツ林の土壌断面において,活動層中では低いが,永久凍土に入ると急に高くなっていた。現在のアラスは永久凍土の融解により形成されたことから,塩分の最大の供給源は永久凍土中の高濃度の塩分であると考えられる.融解が進行すると活動層中の塩分が増加すると考えられる.その増加量は本研究の結果から見積り可能である。森林に比べ耐塩性草地では二酸化炭素の吸収力が75%下がることも明らかになっている。 現在、森林の蒸発散量は上層と下層植生がそれぞれ50%をしめていた。このことから,森林が消失すると水収支が大きく変化する可能性があることが明らかになった。最後に、森林火災は通常森林を完全に破壊するものではなく,生態的メカニズムの一環であることがわかった。森林火災が発生した後,森林生態は大きな影響を受けるものの,約15年間で森林と永久凍土が復活することを明らかにした。
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