本研究は、日本の温暖化対策におけるステークホルダー(政府、企業、NGO)へのインタビューおよびアンケート調査によって、京都議定書で規定されたカーボン・クレジットの「品質」と「価格」の関係を定量的に明らかにすることを目的とした。そのような研究を行うのは、一般的にA gold is a gold is a gold"は真理であるものの、地球温暖化対策としての国際協力の仕組みである京都メカニズムで取引される温室効果ガスの排出権'(カーボン・クレジット)の場合、"A carbon credit is a carbon credit is a carbon credit"は必ずしも真理ではないと考えられるからである。そのため、まず、国際的に形成されつつあるカーボン市場の需給関係や価格を、様々なクレジットの種類および市場に関して詳細に調査した。特に、様々な種類のカーボン・クレジットが持つ量的なポテンシャルや持続可能な発展への貢献という側面での問題点を、大気汚染防止や雇用創出などの副次的便益の有無から検討した。また、環境NGOである世界自然保護連合(WWF)が行っているゴールドスタンダードのように、カーボン・クレジットのプレミアム市場育成を目的とした具体的な試みについて、その現状および課題を明らかにした。さちに、いわゆる株や債権などの格付け会社によるカーボン・クレジットの質の格付けの具体的な方法論を開発した。最後に、カーボンニュートラル(オフセット)と言われる新しい温暖化対策への個人の参加の方式についても、その現状と課題について議論した。
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