現在、東京に生育するセイヨウタンポポの約84%が日本産タンポポとの雑種であることが明らかにされているが、本研究の目的は1980年、1990年、2000年に実施された「タンポポ調査」による乾燥標本を用いて東京における雑種形成の進行過程を明らかにすることである。17年度は次の点に重点を置き、研究を進めた。(1)各年500個体、計1500個体の採集地点、生育地情報のデータベースを作成した。(2)その際、頭花の一部を採取し、花粉の有無の判定のための試料を作成した。判定は18年度に行う。(3)乾燥標本からDNAを抽出する方法を改良し、約500個体分のDNAを抽出した。(4)葉緑体DNAのtrnF-trnL間の非コード領域をPCRにより増幅し、PCR産物のアガロース電気泳動を行い、泳動速度の遅い日本タンポポ型の葉緑体DNAをもつ雑種を識別した。その結果、1980年に採集された帰化種の大部分は純粋なセイヨウタンポポであったが、雑種も1%程度存在することが判明した。18年度は、1990年、2000年の試料について引き続き分析を進め、東京における雑種頻度の時間的、空間的変化を明らかにする計画である。(5)雑種の母親となった日本産2倍体タンポポの個体群を判別するマーカーを開発するため、静岡、新潟、大阪の個体群から2個体ずつ計6個体のDNAを抽出し、葉緑体DNA上のtrnF-trnL、trnH-psbA、trnC-ycf6、mat-K領域をシークエンスしたところ、個体群のマーカーとなりうる相違は認められなかった。18年度は葉緑体DNAのマイクロサテライト部位の比較に取り組む予定である。
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