研究概要 |
平成18年度は、昨年度に特定した腸球菌測定法を用いて、巴川とその流域に設置された浄化槽の実態調査並びに社会基盤の整備調査を行った。得られた研究成果は次のように要約できる。 巴川の水質結果では、BODの基準値を超過した地点が多数存在したこと、また流域で採取した生活雑排水がCOD、T-N、T-Pで顕著に高い値を示したことから巴川の水質汚濁が懸念された。さらに、指標細菌の測定結果では、大腸菌・大腸菌群が巴川上流から検出されたのに対し、腸球菌は生活雑排水の流入が確認された地点以降で検出されたことから、生活雑排水への不十分な処理のし尿の混入が示唆された。また、各指標細菌の挙動を比較したところ、大腸菌と腸球菌に相関関係が認められ、腸球菌の糞便汚染指標としての有効性が期待された。 浄化槽における調査結果では、多くの水質測定項目で合併処理浄化槽に比べ、単独処理浄化槽の方が高い値を示し、単独処理浄化槽の設置基数が多いと思われる巴川流域への水質汚濁が想定された。各指標細菌の挙動の比較結果では、大腸菌群と腸球菌、大腸菌と腸球菌で相関関係を得ることができ、巴川での結果と同様、腸球菌の糞便汚染の指標性が高いことが示唆された。また、Enterolert法およびM-エンテロコッカス法の相関関係を求めたところ、巴川では0.818、浄化槽では0,814と強い相関係数が得られたことから、この2つの手法は公共用水域における腸球菌の評価に十分適用可能であると考えられた。 巴川流域の町ごとの浄化槽設置届出数(平成17年度)に基づき、単独処理浄化槽の割合を調査したところ、支流域での単独処理浄化槽の割合が極めて高く、生活雑排水が巴川に流入している可能性が高いことがわかった。快適で安心・安全な巴川の創成を達成するためには、下水道の面的整備は勿論、単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への転換を推進することが重要であるといえる。 以上のことから、公共用水域において適正な糞便汚染評価を行うことは、公衆衛生上、最重要課題であり、糞便汚染の的確な指標性を得るためにも、本研究で検討した、腸球菌を加味した糞便汚染の評価が有効であると判断できる。
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