本研究は、大腸菌・大腸菌群に腸球菌を加味した糞便汚染評価手法の構築を目指したもので、平成17年度〜平成18年度に得られた研究成果は次のように要約できる。 腸球菌と大腸菌、大腸菌群、擬陽性の可能性がある細菌の基準菌株(7菌株)による純粋・混合両培養での各種評価手法を比較検討したところ、腸球菌の評価手法として、上水試験方法の準公定法であるEnterolert法と下水試験方法推奨のM-エンテロコッカス法の併用が最も有効であることが明らかとなった。小型合併処理浄化槽の試料で確認試験を行ったところ、浄化槽内での大腸菌・大腸菌群と腸球菌の挙動に相関性があり、Enterolert法とM-エンテロコッカス法に高い相関関係が認められた。 次に、巴川とその流域に設置された浄化槽の実態調査並びに社会基盤の整備調査を行ったところ、巴川流域と浄化槽とも、Enterolert法およびM-エンテロコッカス法に高い相関関係が認められ、公共用水域での腸球菌の評価に十分適用可能であることが明らかとなった。また、生活雑排水から腸球菌が検出されたため、単独処理浄化槽の割合を調査したところ、支流域での単独処理浄化槽の割合が極めて高く、生活雑排水が巴川に流入している可能性が高いことがわかり、単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への転換を推進することが重要であることが示唆された。 以上のことから、公共用水域において適正な糞便汚染評価を行うことは、公衆衛生上、最重要課題であり、糞便汚染の的確な指標性を得るためにも、本研究で検討した、腸球菌を加味した糞便汚染の評価が有効であると判断できる。
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