研究概要 |
今年度は毛髪中の鉛同位体比についての知見を得るために、毛髪試料を分解し、溶液試料としてICP-MS測定により鉛同位体比を求めたのち、LA/ICP-MSによる測定について検討した。 毛髪試料はBCR CRM397を用いた。毛髪標準試料約0.1gとでんぷん約0.5gと合わせてParr1108酸素高圧燃焼ボンブ中、3MPaの酸素下で瞬時燃焼させ、30分間放置後、分解液を試料としICP-MSにより鉛同位体比測定を行った。吸収液として、5%%HNO_3,1%H_2O_2を用いた。また、LA/ICP-MS測定には毛髪試料を30kg/cm^2の圧力で加圧調製したペレット試料を用いた。測定値の規格化にはいずれもNIST SRM981Leadを用いた。NIST標準試料を硝酸で加熱溶解し、溶液試料の測定には5%%HNO_3,1%H_2O_2で希釈して用いた。またLA/ICP-MS測定には硫化鉛へと変換した粉末試料をペレットに調製して用いた。ICP-MSはAgilent7500ICP-MSを用い、RFパワー1.4kW、アルゴンガス流量1.2-1.3L/minとした。またレーザーはNd:YAGレーザー(266nm)を用いた。酸素高圧燃焼法により、同位体比測定に十分な濃度の鉛を回収できた。この試料溶液を用いてBCR毛髪標準試料中の鉛同位体比を求めたところ、精度よく測定が可能であり、^<206)Pb/^<207>Pbとして1.145、^<208>Pb/^<206>Pbとして2.165が得られた。一方、LA/ICP-MSの測定条件として、レーザーエネルギー1.8mJ、スポット径300μm、積分時間0.5sec、繰り返し速度20Hzでon focus測定が最適であった。この条件で^<206>Pb/^<207>Pbとして1.142、^<208>Pb/^<206>Pbとして2.116が得られた。
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