研究課題
社会の多様性を踏まえたシステム選択と評価のあり方を検討するために、システム選択の前提となる情報のあり方を明らかにし、かつ、その情報を合意形成につなげる方法として、多基準分析を活用することによって、システム選択における合意形成支援を検討した。平成17年度に実施した、複数の評価主体による判断の差異に焦点を当てた予備実験を踏まえ、平成18年度は評価の主体の観点から、身近な環境問題の狭いレベルから、地球環境の広範なレベルにまで、評価の対象を変えると評価の枠組みはどのようになるのかを把握することを目的として試行実験を行った。佛教大学社会学部公共政策学科の学生のうち「環境アセスメント論」または「循環社会システム論」を受講する学生を対象として、環境にかかわる様々な選択問題において、(1)考慮するのはどのような環境問題であるか、(2)評価する際にはどのような評価基準を重視するのかを尋ね、297名から回答を得た。得られた結果のうち、生活に身近なレベル(自分にのみ影響があり、主に自分で選択できる)として「自宅の冷暖房」、次のレベル(自分にも影響があるが自分では直接に選択できない)として「大学の冷暖房」、やや抽象的なレベルとして「原子力発電所の建設」をとりあげて分析した。同じ学部生で環境問題に関する同じ講座を受講しているといった、同じような属性を持つと想定される集団に対する試行実験であったが、個々人の内部でも、また、同じ本質を持つような選択問題であるはずであっても、判断(スコアリング)はもちろん、枠組み(考慮する項目)に関しても一致しない場合のほうが多いことがあらためて確認された。「自宅の冷暖房」のように身近な選択問題では、一部の環境問題に意識が集中しやすく、「原子力発電所の建設」のような建設地周辺の住民以外にはどちらかというと抽象的な選択問題では、身近な問題の場合に比べてより包括的に考えられるようにも受け取れる。
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地域学研究 第37巻(印刷中)
都市科学研究 第1巻(印刷中)
Third World Congress of Environmental and Resource Economists (CD-ROM)
ページ: Paper Reference Number.479
日本地域学会第43回年次大会学術発表論文集 (CD-ROM)
ページ: rA09-1
ページ: rC02-3
地域学研究 第36巻
ページ: 931-944