研究概要 |
研究初年度の2005年度中には,2005年12月および2006年2月の2回,カウンターパートのインド森林管理研究所の研究者とともに調査地のインド,マディア・プラデシュ州で予備調査を実施した。第1回めの調査では,主として森林管理制度の実施状況について,第2回めの調査では,主として森林管理と井戸水灌漑の状況について聞き取りを行った。それらの予備調査の結果に基づき,8年前に使用した調査票の改訂し,新しい調査票を完成させた。本調査は,2006年の雨期の後,すなわち2006年11月ごろに実施することを決定した。 8年前の調査時に普及が進められていた住民参加型の森林管理制度(ジョイント・フォレスト・マネージメント)の現状については,制度そのものは持続しているものの,州の森林局による地元住民の動員策の側面が強く,住民の便益は賃金収入に限定されていることが判明した。それでは,同制度の当初の目的である「地元住民が主体的に森林管理を実施する」ことは実現していない。その理由には,森林管理からの収益(すなわち,伐採した木材の販売収入)が実現するまでに,何十年もかかるという問題がある。そこで,森林管理により賃金収入以外の便益があるか,またある場合にはどの程度の経済価値なのかを解明することが重要であると考えられる。つまり,森林の多面的機能である。一方,電気モーターを使った井戸灌漑の普及は過去8年間に著しく進んでおり,一部では,過剰な汲み上げが問題となりつつある。 以上から,2006年度中に実施する本調査では,森林の保全が以下の3点について効果があることを実証することにする。すなわち,(1)非木材森林産物の収穫による所得の向上,(2)地下水位の上昇により井戸灌漑への外部効果および農業生産性への貢献,(3)直接的,あるいは間接的な健康増進,である。
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