研究概要 |
2007年2月より開始した本調査(60か村の村落調査+各村6世帯の家計調査)は途中で調査員の辞職があり交代要員の採用に時間がかかったため,同年の乾期中には完了できなかった。雨期(6月から9月)にはアクセスが困難な村もあるため調査活動は休止し,2007年10月から調査を再開した。2008年3月の段階で,調査は概ね完了したが,データ入力は進行中であった。したがって,調査結果の詳細な分析は2008年度中に持ち越しとなる。 本研究の主要な課題は,インドの住民参加型森林管理(Joint Forest Management,JFM)が農民の生活水準と森林資源の保全に及ぼす影響を明らかにすることである。前回に調査を実施した1987年の時点では,調査地のあるマディア・プラデシュ州では世界銀行の資金によりJFMプロジェクトが開始されたばかりであり,実施する州の林業部も受け入れる農民にも期待が大きかった。しかし,今回,実施した聞き取りでは,実際にはチーク等の有用樹を植林しても収益が得られるのは数十年先であり,農民側に十分な動機が与えられていない印象である。JFMが農民に与えるインパクトは,植林や枝打ちなどの作業に動員される際に支払われる日当収入であろう。経済成長が続き都市と農村の格差が顕在化しているインドでは,10年前と比べると,農村部の経済厚生を高めるような様々な事業が行われるようになった。そのため,JFMプロジェクトは数ある事業の中の一つという位置づけでしかない。世界銀行の資金供与も終わった現在では,関係者の間でJFMへの関心が失われているように見受けられる。こうした背景を念頭に,2008年度中に調査データの詳細な分析を行う。
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