光毒性の作用機構は、太陽光下(主に紫外線)で構造変化した化学物質が水溶性を増し、生物体内に取り込まれやすくなることにより毒性が増大すると考えられているが、海産植物プランクトンに対し光毒性を生物機能の側面から調べた結果、1)植物プランクトンの生長は、強光照射+ナフタレン暴露区において強く阻害されていた。よって光合成生物の植物プランクトンへの毒性は、強光(白色光)による光障害とナフタレンの毒性による複合影響によっても増大することが明らかとなった。また、ラン藻の生長は赤光照射+ナフタレン暴露区において強く阻害されていた。植物プランクトンの種類によって含有する色素が異なるため光傷害を受ける波長も異なることが明らかとなった。2)光防御機能であるキサントフィルサイクルは強光照射+ナフタレン暴露区において、色素の変換が早く起こっていた。そのため、ナフタレンの暴露は、キサントフィルサイクルを直接阻害するのではなく、植物プランクトンの光合成を阻害すると考えられた。そして、植物プランクトンは光合成能の低下に伴い光障害から身を守るために、通常より早くキサントフィルサイクルを反応させるという考察を得た。3)紫外線+白色強光+ナフタレン暴露区では、光合成の指標となる溶存酸素量が少なかった。そのため、紫外線、強光による光障害と化学物質の毒性による複合影響によっても毒性が増大することが明らかとなった。一方、マイコスポリン様アミノ酸(MAAs)/クロロフィルa比は紫外線照射やナフタレン暴露による変化が明確でなく、実験で使用した植物プランクトンに対しては、紫外線照射+ナフタレンの暴露はMAAsの生成に影響を及ぼさないと考えられた。
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