研究概要 |
前年度に引き続き、放射線照射後の遺伝子修復における核高次構造変化の意義を解明するために、複数の遺伝子修復関連タンパク質が形成する核内高次構造体(核内フォーカス)の局在関連を間接蛍光抗体法と直接蛍光抗体法を組み合わせたマルチカラー免疫蛍光抗体法を用いて解析した。本年度は、正常、ATM欠損およびligaseIV欠損ヒト繊維芽細胞株におけるFK2,γH2AX、53BP1、RAD51フォーカスの局在関連を経時的に解析した。その結果、正常細胞では2Gy放射線照射30分後まずFK2フォーカスがγH2AXフォーカスと共局在し、ついで53BP1フォーカスがこれらのフォーカスと共局在することが明らかになった。12Gyでは放射線照射1時間以降になって初めてこれら三者が共局在することが明らかになった。一方、ATM欠損細胞では、2Gyおよび12Gyγ線照射においてともにこれらの放射線誘発核内ドメインの形成が著明に抑制されていることが明らかになった。さらに、末端融合修復機構の障害をもつligaseIV欠損細胞では、RAD51フォーカスの形成が著明であり相同組換え修復機構が活性化されていることが示唆された。ligaaseIV細胞では、12Gy照射6時間後におけるγH2AXとFK2、24時間後のγH2AX/RAD51/53BP1/FK2の共局在が著明に増加しており、相同組換え修復機構とタンパク質のユビキチン化脱ユビキチン化機構の関連が示唆された。 現在、生細胞実験系と紫外線マイクロ照射法を組み合わせることにより、ゲノム損傷誘導直後からのこれらゲノム修復関連蛋白質の動態解析を進めている。
|