研究概要 |
1)放射線照射後の細胞内DNA切断を調べるため、DNA切断修復酵素であるリン酸化H2AX(γH2AX)およびNBS1に対するフォーカスアッセイを行った。対照実験としてスライドガラス上に接着、培養した肺線維芽細胞をブロードビームのCo60γ線で照射した場合、照射後30分でγH2AXおよびNBS1のフォーカス量は最大になり、以降120分にかけてフォーカス量は減少した。単色X線マイクロビーム(〜5keV)を細胞毎に一定線量照射した場合、照射30分後のNBS1フォーカス量は0〜3Gyの線量域で線量に比例して増加した。肺上皮細胞のγH2AXフォーカスも線量依存的に増加した。 2)肺上皮細胞内での一酸化窒素(NO)量の増減を測定するため、NO結合性蛍光色素のDAF-2DAを用いた細胞内NOのバイオイメージングを行った。スライドガラス上に培養した細胞をDAF-2DA(2μg/ml)を含む緩衝液中で一定時間培養,洗浄後に、細胞毎の蛍光強度を蛍光顕微鏡で測定した。DAF-2DA処理開始後経時的にNO結合DAF-2DA由来の蛍光強度は増加したが、30〜60分の処理でほぼ蛍光強度はプラトーに達した。細胞は定常的にNOを生成していると考えられる。γ線4Gy照射後24時間で蛍光量は有意に増加した。 3)細胞内のNO合成酵素(NOS)量を知るため,nNOS、eNOSおよびiNOSの3種類の酵素について免疫蛍光染色法を用い、個々の細胞からの蛍光量を測定した。非照射細胞において、nNOS、eNOSおよびiNOSによる蛍光が観察された。γ線4Gy照射細胞では照射12時間後にiNOSによる蛍光量が増加した。X線マイクロビーム照射では、照射後数時間の培養期間中に起こる細胞移動により、照射細胞を特定できないことがあり、iNOS由来蛍光量について照射細胞と非照射細胞の間で統計的有意差を見いだしていない。
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