1.単色X線マイクロビーム(5.35keV、10μmx10μm)により細胞核照射を受けた肺上皮細胞でのDNA鎖切断:DNA修復酵素γH2AXに対する免疫蛍光染色フォーカスアッセイを行った。NHBE細胞において0〜1000Rの領域で、線量依存的にフォーカス蛍光量は増加した。またマイクロビーム照射された肺繊維芽細胞でのNBS1酵素に対するフォーカス蛍光量も300Rまで線量依存的に増加した。マイクロビーム照射により標的細胞核にDNA損傷を生成していることが確認された。 2.肺細胞内一酸化窒素(NO)のDAF-2DAバイオイメージング:細胞間接触が無い状態でのNHBE細胞集団の一部を細胞核照射したところ、照射後24時間までではDAF-2DA由来蛍光量の有意な増加は認められなかった。細胞が互いに接触しうる状態では、播種細胞の1%以下の細胞を照射(500R)したとき、非照射の場合に比べ、照射後10および24時間目に、有意な蛍光強度を示す細胞数の割合は増加した。また、蛍光を発する細胞では、細胞当たりの蛍光強度が照射後増加した。照射標的細胞の周辺に存在する非照射細胞における蛍光量が増加した。これは細胞内NO量の増加によるものと考えられ、照射された細胞から非照射細胞へのバイスタンダー効果を示唆する。 3.細胞内一酸化窒素合成酵素(NOS)の誘導:誘導型NOS(iNOS)について免疫蛍光染色を行った。NHBE細胞で細胞間接触がある場合、非照射細胞ではiNOS由来の蛍光を認めないが、マイクロビーム照射細胞群では、照射後24時間では有意な蛍光を示す細胞が認められた。 4.細胞間接触(コミュニケーション)が存在する状態に置かれた肺上皮細胞ではバイスタンダー効果による細胞内活性の変化が示唆された。
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