研究概要 |
平成17年度と18年度に得られた結果の追試および補足実験を行い、DEP中のニトロフェノール化合物の内分泌・生殖器影響についてまとめると共に、構造活性相関を検討した。さらに構造異性体(ONPなど)について鳥類に対する影響について検索した。その結果、PNPが抗アンドロゲン作用を、PNMPPは低濃度で抗アンドロゲン作用を示し、高濃度でエストロゲン作用を持つ事を明らかにした。一方、ONPの作用はPNP,PNMP,PNMPPに比較して異なり、構造による作用の強さが異なることが判明した。特に、ONP(ベンゼン環の1と2に水酸基とニトロ基がある)はエストロゲン作用と高アンドロゲン作用を示さなかった。従って、水酸基とニトロ基の位置関係による構造活性相関を明らかになった。さらに、これらのニトロフェノール類の抗アンドロゲン作用は、鳥類では哺乳類よりも4-5倍強い事が判明し、そのメカニズムが肝細胞の解毒機能の違いにあることを明らかにした。また、ディーゼル排気中のニトロフェノール化合物の定量と環境中のニトロフェノールのヒトへの健康影響および生態系への負荷を検討した。最新の我々の測定では、ニトロフェノール類の含量は200mg/kg DEPであった。PM2.5の大気環境基準値である100μg/m3で全てDEPと仮定した場合、20ng/m3で、1日吸入量は300ngと試算され、現状での寄与率は低いと推察された。しかし、PNMCは農薬のフェニトロチオンの第一次分解物質であり、日本では年間1200〜1400トン使用されている。化学構造からその半分はPNMCであり、田畑、山林に集中的に散布されており、差は大きいが数mg/m^3の高濃度の報告もあり、難分解性である事と鳥類は哺乳類より4〜5倍影響が強い事から、農薬による生態系への影響は無視できないと考えられた。
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