研究概要 |
出産後1週間以内の母親からインフォームドコンセントのもと、母乳と血液の提供を受けた。また、アンケートにより、母親のプロフィール、出産歴、喫煙歴、食習慣などについて調査を行った。母乳は遠心し、母乳細胞とクリーム層に分離した。クリーム層について、ダイオキシン類およびPCB濃度をHRGC/HRMSにより測定した。ダイオキシン類(PCDD+PCDF+Co-PCB)濃度は、幾何平均で15.1pg TEQ/g fatであった。母乳細胞については、RT-PCRにより、CYP1A1mRNAの発現解析を行った。Cyclophilin Bで補正した値の中央値は5.14(0.02-194.79)であった。母乳中ダイオキシン類濃度とCYP1A1mRNA発現との関連は見いだせなかった。血液サンプルについて、DNAを抽出し、CYP1A1(CYP1A1 m1、CYP1A1 m2)、GSTM1の一塩基多型(SNP)の解析を行った。CYP1A1m2 homoでは、wild, heteroに比べて有意に母乳中のPCDFsおよびPCDD/F+CoPCB濃度が低かった。母乳などの生体試料中のダイオキシン類レベルを曝露の指標とする場合には、CYP1A1、GSTMI遺伝子多型も考慮する必要があることが示唆された。低出生時体重は、在胎期間、肉の摂取と関連していたが母乳中のダイオキシン類濃度とは関連していなかった。高出生時体重は、non-coplanar PCBの合計と関連していた。出生時体重と多型との関連は認められなかった。母乳細胞中におけるCYP1A1の発現は低く、ダイオキシン類濃度との関連も見いだせなかったことから、曝露のバイオマーカーとしての有用性は確認できなかった。
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