研究概要 |
平成18年度は、前年度に引き続いて、陰イオン性界面活性剤AerosolOT(AOT)と種々の分子性配位子(ジグリコールアミド、ジアミドなど)を組み合わせたシナジー逆ミセル系を利用して、目的元素(U、Sr、Ln、Pu、Cs)の分配実験を行い、良好な結果を得た。また、シナジー逆ミセル系での抽出メカニズムを明らかにするために、動的レーザー光散乱(DLS)を用いて、種々の条件下での逆ミセルサイズの測定を行った。その結果、分子性配位子の濃度を変えることで、目的元素の抽出率を維持したまま、逆ミセルサイズが制御できることを見いだした(特願2006-164769)。さらに、逆ミセル内において内核水相を形成している水の濃度を測定し、逆ミセルサイズとの関係を解析した。その結果、逆ミセルサイズと内核水相の体積は、界面活性剤と配位子の濃度比に応じて変化することが明らかになった(J. Phys. Chem. B, submitted)。また、前年度に開発した環境調和型で高性能な新規抽出剤DODGAA(特願2006-157842)を利用した上記目的元素の抽出・分離を検討し、良好な結果を得た(Solv. Extr. Res. Dev., Jpan,2007 in press)。さらに、新しい原理に基づく連続液-液抽出法を開発し、装置のプロトタイプを作製した(特許出願手続中)。また、この抽出装置をさらに高性能化することで、プロトタイプと比較して抽出性能を大幅に向上させることができた。また、環境水を模擬した試料溶液を用いて適用性試験を行い、良好な結果を得た。すなわち、シナジー逆ミセル抽出系(新規マイクロエマルション系)と独自に開発した抽出装置を組み合わせることで、200Lの模擬環境水を50分程度で処理して、目的元素を約99%の抽出率で高選択的に分離・濃集することに成功した。
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