研究課題
治療遺伝子を放射線応答性のプロモーターの制御下に置き、腫瘍を放射線照射することで腫瘍部位のみで治療遺伝子を発現させる方法が試みられているが、これまでに試みられてきた方法は1回当たり2Gy以上の高い放射線量を要することが難点であった。我々はこれまでにアデノ随伴ウイルスベクターを用いることにより、p21^<WAF1>遺伝子プロモーターの高い低線量放射線応答性が得られることを示してきた。本研究ではこの性質を利用して遺伝子治療ベクターを開発することを目的としている。昨年度はp21^<WAF1>遺伝子プロモーターに治療遺伝子としてヘルペス単純ウイルス由来チミジンキナーゼ(HSV-tk)遺伝子を接続し、アデノ随伴ウイルスベクターを用いてMCF-7細胞に導入した。これに5時間の間隔をおいて1GyのX線を1日2回、連続5日照射した場合、10オg/mlガンシクロビル存在下でHSV-tk遺伝子導入細胞の放射線感受性が顕著に高まることを確認した。これによって、p21^<WAF1>遺伝子プロモーターにHSV-tk遺伝子を接続したアデノ随伴ウイルスベクターががんの遺伝子治療に有効である可能性を示唆した。本年度は、p21^<WAF1>遺伝子プロモーターにHSV-tk遺伝子を接続したDNAコンストラクトをMCF-7細胞に安定導入(トランスフェクション)し、ヌードマウスの鼠径部に移植した。この場合、形成された移植腫瘍のすべての細胞にDNAコンストラクトが導入されていると考えられる。腫瘍形成後、毎日2回のガンシクロビルの投与と放射線照射(1Gy)を行ったところ、放射線の治療遺伝子により放射線の抗腫瘍作用が増強されることが確認された。来年度は、実際の治療条件下での効果を調べるために、培養細胞をヌードマウス移植し、腫瘍形成後アデノ随伴ウイルスベクターで治療遺伝子を腫瘍に摂取し、ガンシクロビル投与と放射線照射を行いつつ腫瘍の大きさを測定する。
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