研究課題
基盤研究(C)
遺伝子治療は悪性腫瘍に対する主要な治療戦略である。治療遺伝子を放射線応答性のプロモーターの制御下に置き、腫瘍を放射線照射することで腫瘍部位のみで治療遺伝子を発現させる方法が試みられているが、これまでに試みられてきた方法は1回当たり2Gy以上の高い放射線量を要することが難点であった。p21遺伝子のプロモーターは多様な細胞種において1Gy以下の低線量放射線に応答して活性化されることが知られているが、我々はこれまでにアデノ随伴ウイルスベクターを用いることによってその高い低線量放射線応答性を遺伝子発現ベクター上に再現できることを見出している。本研究は、p21遺伝子プロモーターの高い低線量放射線応答性を利用して遺伝子治療ベクターを開発することを目的とした。まず、p21遺伝子プロモーターに治療遺伝子としてヘルペス単純ウイルス由来チミジンキナーゼ(HSV-tk)遺伝子を接続し、アデノ随伴ウイルスベクターを用いてヒト乳がん由来細胞MCF-7に導入することにより、ガンシクロビル存在下で放射線感受性が顕著に高まることを確認した。次に、本コンストラクトをMCF-7細胞に安定導入(トランスフェクション)し、ヌードマウスの鼠径部に移植したところ、形成された移植腫瘍に対する放射線の抗腫瘍作用がガンシクロビル投与下で増強されることを確認した。以上の結果から、p21遺伝子プロモーターの高い低線量放射線応答性を利用した遺伝子治療ベクターの有効性が実証された。一方、低線量放射線応答性のより高いベクター開発を目的として、p21遺伝子プロモーターの低線量放射線応答性の機構を調べた。その結果、転写因子Oct1がp53と協調してp21遺伝子プロモーターの放射線応答に機能していることを明らかにした。そして、p21遺伝子プロモーターにおける-1678bp/-1399bpの領域を欠失したプロモーターは野生型よりも放射線応答性が高くなることを観察し、放射線感受性のより高い人工プロモーターを搭載した遺伝子治療ベクター開発の可能性を示した。
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