研究概要 |
18年度は、脳脊髄液中で最も高濃度、高頻度で検出される水酸化PCB187の脳発達への影響を中心に研究を進め、以下の結果を得た。 1.マウス小脳培養系を用いた水酸化PCB187の脳発達への影響 1)シナプス形成の阻害:水酸化PCB187は、甲状腺ホルモン依存性のプルキンエ細胞樹状突起伸展を阻害しないが、低濃度(100pM<)においてもシナプス形成に阻害効果が認められた。さらにそのシナプス形成阻害効果は、甲状腺ホルモン添加によつて緩和された。これを解析するために、甲状腺ホルモンや様々なステロイドホルモン、アンタゴニストなどを同時添加し、さらに培養上清中の生理活性物質(BDNF, TNFα、TGFβ、NO, etc)を計測したが、現在のところ原因は不明である。19年度においてもその原因を追求する予定である。 2)programmed cell deathを起こすメカニズム:さらにこの水酸化PCB187は、濃度によって神経細胞の生残数に有意に影響を及ぼす。5-50nMではプルキンエ細胞の生残が有意に上昇するが、1μM以上では、programmed celldeathを起こす。これについても、1)で調べたように、他のステロイドホルモンやアンタゴニストの添加、また生理活性物質を調べたが、現在原因は不明である。Programmed cell deathを起こす条件では、アストロサイトで通常認められないnNOSが上昇していることが観察され、それとの因果関係を確認中である。 2.水酸化PCBとトリブチルスズの複合効果 水酸化PCB187と神経毒性の報告があるトリブチルスズを、小脳培養系に同時添加したところ、単一では影響ない濃度においても、同時添加することにより、有意にプルキンエ細胞の生残数が低下した。 なお一次スクリーニング系として、樹状突起伸展とシナプス形成を簡便に定量化するシステムを19年度に計画中である。
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