北海道内の二箇所の油田跡より、原油により重度に汚染された土壌サンプルを取得し、1)原油分解にかかわる微生物の集積培養、2)環境中に残存性が高く、微生物分解が困難とされている潤滑油(イソアルカンとナフテンが主成分)分解性に焦点を当てた石油分解菌の集積培養を行った。当該原油汚染土壌は4-10%(重量比)の重油を含んでいるが、既存、既知の石油分解菌のあるものはこの土壌中で死滅することから、土壌環境としては非常に毒性が高いことが予想された。 1 原油分解菌の集積は、汚染土壌にLB培地(富栄養)と最少塩培地(MSM)を用いて行った。原油分解の程度は1、2月間でそれぞれ40%、60%であり、培地の違いによる差はほとんどなかった。PCR-DGGE法により調べたこの間の土壌微生物叢め構造は培地により大きく異なり、両者に共通するバンド(16SrRNA遺伝子のPCR増幅断片)は全くなかった。それぞれのバンド(バンド数各々約20)に対応する原油分解菌の単離操作は進行中である。なお、原油汚染土壌からDNAを抽出する際に、その効率を上げるために土壌DNA抽出法を新たに開発した。 2 機械潤滑油の分解を指標とするイソアルカンとナフテン分解菌の集積も、上記の二種の土壌サンプルを材料として行った。5日間で85%の潤滑油分解率を示す菌群が得られた。 3 2の集積培養液から個々の菌種の単離を試み、約10株を単離した。単離株の機械潤滑油分解活性は集積培養された菌の混合物の10%以下と非常に低く、分解菌相互の連携が高い機械潤滑油分解活性をもたらしていることが示唆された。 上記の成果1に記載されている新たな土壌DNA抽出方法は、核酸調製方法および核酸調整キットとして北海道大学より特許出願した。2の成果に関しても特許出願を予定している。
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