大気中に放出されたフロンガス等によるオゾン層破壊の影響は、南極上空で顕著に観測され、毎年春先にオゾンホールが発生している。太陽光線、なかでも皮膚ガンや白内障を引き起こす可能性のあるB領域の紫外線が増し、オーストラリアでは皮膚癌患者増加の傾向も報告されている。我々は南極昭和基地に人工皮膚、各種の布地、牛眼(水晶体、角膜)を運搬し、紫外線に曝露した際の影響を定量的に解析する実験を平成16年度から開始している。 平成19年度は、第49次南極地域観測隊(夏隊)として、南極地域において紫外線曝露し、皮膚細胞に与える影響を調べた。また、平成19年度は本研究の実施計画を立案、装置の設計、研究に必要な機材の選定や発注なども主に実施した。これらの研究は南極大陸に降り注ぐ紫外線を利用するものも含まれており、貴重な科学的データを集積できる可能性が非常に高い。 48次隊によって日本に持ち帰った夏季と秋季の曝露試料(コラーゲン分解酵素を含む抽出液など)、49次隊によって日本に持ち帰った春季の曝露試料のザイモグラフィー分析等を行なった。具体的には、UV照射による皮膚へのダメージとしてのコラーゲン分解酵素、細胞死、細胞膜の破綻、核DNA切断などの細胞障害や、抗酸化ビタミンなどによる人為的防御について調べた。
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