研究概要 |
鉄酸化細菌Acidithiobacillus ferrooxidansは,バクテリアリーチングや環境浄化などで非常に有用な細菌として注目されている。自然界より単離した鉄酸化細菌150株に対して水銀耐性株のスクリーニングを行い,A.ferrppxodams SUG2-2株を選択した。さらにSUG2-2株を植継培地の塩化水銀濃度を徐々に上げて継代培養することによって調製し20μMの塩化水銀存在下でも増殖可能な高度水銀耐性株A.ferrooxidans MON-1株を得た。これらの耐性株には,NADPH依存性の水銀還元酵素活性に加えて,二価鉄依存性の無機水銀気化活性を持つことを明らかにした。そして,MON-1株は,無機水銀のみでなく有機水銀に対しても高い二価鉄依存性の分解気化活性を有することを新たに見出した。鉄酸化細菌には有機水銀分解酵素遺伝子merBは持っていないことが報告されていたが,MON-1株にはmerBと同様な活性が細胞膜に存在しcytochrome c oxidaseが重要な役割を果たしているという大きな発見をした。MON-1株は,無機水銀及び有機水銀で汚染された水銀汚染土壌,水銀廃液から水銀を金属水銀(Hg^o)として気化する機能を有するため,既存の吸着設備とを組合せることによって,高温加熱することなく,低コストで水銀を選択的に回収する技術として利用できる。実際に汚染土壌現場における現地試験で実用化の確認を行った。本菌は化学合成独立栄養細菌で増殖が遅いために,少量の培地で高濃度の菌体を得ることが可能な独自の電気培養装置を開発し,本装置によって通常培養による方法と比べ20分の1の培地容量で,130倍程度の菌体収量が可能となった。このことによって種々の菌体のctochrome c oxidase等の酵素精製と生化学的解析,水銀等による汚染環境の浄化,銅等のバクテリアリーチングの活性化などに関するシステム開発において大きな基盤となり,今後の発展が期待できる。
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