福井県における、平成18年から平成19年にかけて発生した積雪・融雪の被害状況を把握するとともに、融雪によって引き起こされた地すべりについての研究を行った。また、福井工業高等専門学校敷地内に地すべり発生の模擬斜面と観察施設を設置して、降雪の融雪状況と地面内の融雪水の下降する様子を観察した。さらに、地面内の粘土粒子が地中を降下するシミュレーションを理論的に解析した。これらのことより、次のような研究結果が得られた。 (1)福井県における代表的な地すべり発生地である、丹生郡越前町梨子ケ平地籍で平成6年頃より発生している地すべりについて、我々はさまざまな方法により観察を続けてきた。この地すべりについて、現地での様々なデーター測定を行い、全体の地すべり地域を4つの区域に分割し、その地すべりの原因と平成19年度以降の危険度を報告した。 (2)地滑り面は、一般に力学的に傾斜量などの地形によって決定されることと、地質的に粘土層において、すべりが発生することの矛盾を解明する一方法として、地表から地中への浸透による微粒子の運動が粘土層を形成し、力学的討論に影響すると考えてシミュレーションを試みた。その結果、微粒子層(粘土層)が地中のある深さに生成されることがわかった。 (3)地すべり発生の模擬斜面と観察施設を構築し、このようなモデルを実際に適用する際に重要となる、積雪と融雪による地表水の生成を実際に模擬斜面の実験により、測定した結果、福井県のような温暖な地方でも積雪後、ただちには地表水とならないことがわかった。
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