研究概要 |
世界に事例のない「大気中ホウ素化合物による植物被害」が発生した。水系の植物被害については、処分場排水によって稲が枯れる事例が発生しすでに水質環境基準が設定されている。しかしながら、大気中ホウ素化合物については、法規制がなく、測定法(告示法やJIS等の公定法)が無い状況にあった。煙道排出ガスの有害ガスの測定に良く使われている『煙道外で捕集する方法』(二形方式)を開発したが、ホウ素化合物が昇華性を有するためか,他の有害ガスの測定に比べてバラツキが大きく,再現性の高い精度のある測定が出来ない現状にあった。このホウ素化合物の昇華性が原因とすれば,煙道内と煙道外の捕集部の温度差やホウ素化合物の分圧等の変化が大きく影響していると考えられる。 そこで、昇華性を有する大気中ホウ素化合物について、煙道内外の温度差や分圧等の影響の少ない一形方式(『煙道内で直接捕集する方法』)を採用した工場排出ガス濃度および環境濃度の測定法を開発し、同時に最適な捕集剤の開発を目的とした。 検討した測定方法は,17年度と同様、工場排出ガスについては、人工煙道装置を使って、第1段目に粒子状捕集用0.2μmテフロンフィルタ「第2,第3段目にガス状捕集用各種アルカリ含浸ろ紙の3段組のSUS製フィルターホルダー(ろ紙径25mmφ用)を煙道内に直接挿入し,毎分1Lで1時間吸引し捕集する。捕集フィルターを超純水で超音波抽出し,ディスポフィルターでろ過し,メスアップし,ICP-MSで測定する方法である。 17年度はアルカリ含浸ろ紙として炭酸カリウムを検討したが、18年度は炭酸カリウムの他、炭酸ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウムの6種類について、検討を行った。炭酸ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化バリウムについては、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムは捕集効率が優れており十分に一形方式で使用できることが明らかとなったが,水酸化リチウム及び水酸化バリウムは適用範囲が狭いことが明らかとなった。炭酸カルシウム、水酸化マグネシウムについては、炭酸カルシウムは既報の炭酸カリウムと同様に捕集効率が優れており十分に一形方式で使用できることが明らかとなったが,水酸化マグネシウムはやや劣ることが明らかとなった。 今後,各種アルカリ含浸フィルターの耐熱性の問題と、C18のような固定相ろ紙や活性炭ろ紙等について、各種条件を変えて、工場排出ガス濃度及び環境濃度の測定の回収率、繰り返し精度等も確認するとともに、各種のアルカリフィルター、活性炭フィルターなど、最適な捕集材を検討する。
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