研究概要 |
本研究の目的は (1)ナノメートルオーダーに先鋭化された光ファイバーの先端,あるいはカーボンナノチューブ先端のような物質のナノ領域に局在した光と物質系(電子系と格子系)が相互作用する系を量子論的な枠組みの下に統一的に記述すること, (2)通常の伝搬光では不可能な協同現象発現を予測し,それを用いたナノ構造形成のメカニズムと動的過程を明らかにすること, (3)非断熱過程も考慮に入れて、単一原子・分子の状態と位置を操作することにより、サイズと生成位置を制御したナノメートルオーダーの(量子効果が期待される)ドットあるいはクラスターを作製するメカニズムの解明と新しい方法を提案し,新技術の創製を目指す実験へ指針を与えられる理論モデルを構築すること, の3点である.今年度は,伝搬光と局在光との明確な違いに着目して,光・電子励起・格子振動を同等に扱った素励起を基底に場の量子論的な定式化を行い,ナノ領域の光応答を求める研究を行った.その結果,今年度の研究目標としていた以下の知見が得られた. (a)光近接場プローブ本体のような巨視的なスケールでの物質場と入射光子が相互作用する系を、光・電子励起・格子振動を同等に扱った素励起(励起子フォノンポラリトンモデル)を用いて記述できること, (b)1次元鎖系にドープされた不純物による局在フォノンモードと局在光子との相互作用に反エルミート演算子によるカノニカル変換を行うことにより,入射光子により誘起された電子励起と格子振動が光ファイバープローブ先端,あるいはカーボンナノチューブ先端で局在化し,摂動では取り扱えない多重フォノンが顕在化する機構,すなわち,コヒーレントフォノンの衣を着た局在光子が出現すること, (c)コヒーレントフォノンの衣を着た局在光子が近接場光による分子の非断熱解離過程に重要な役割を果たすこと, が明らかになった.
|