本年度は中間サイズ・ナノワイヤーの熱伝導に関する研究を行った。申請者は、本研究の開始前に、二体経験ポテンシャルを用いた分子動力学法による熱伝導度の計算プログラムを作成している。これは、ナノワイヤーの両端に温度を一定に保つことのできる二つの熱浴を配し、熱浴に温度差を与えて熱流を計算し、熱伝導度を直接求めるものである。本年度は、炭素系およびシリコン系の熱伝導度の計算ができるように、このプログラムを拡張した。原子間ポテンシャルとして、Burgosらによって改良されたTersoff型の経験的多体原子間ポテンシャルを用いて熱伝導度を計算するプログラムを作成した。これを次年度以降ダイヤモンドおよびシリコン・ナノワイヤーの熱伝導の計算に応用する。 中間サイズのナノワイヤーとしては、断面が多角形の構造を考える。今年度はまず、[110]方向を軸にもち、{111}面および{001}面が側面である構造を考えた。このような構造を考えた理由は、{111}および{001}面がダイヤモンド構造をもつIV族結晶の低エネルギー面であるからである。今年度は予備的な計算を行う目的で、単純な1×1構造表面を考えた。また、熱伝導度の計算結果を解析するために、フォノン構造を計算するプログラムを作成した。フォノンのバンド構造は、動力学行列を対角化することにより求める。これを上記のTersoff型の経験的ポテンシャルと組み合わせて、表面およびナノワイヤーのフォノン分散の計算に応用する。
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