ポリ(スチレン-b-2-ビニルピリジン-b-エチレンオキシド)のようなABC型(非対称型)トリブロック共重合体をB、Cに選択的な溶媒に溶解すると、Aをコア、Bをシェル、Cをコロナとするミセルを形成することが知られている。本研究は、(i)このようなコア-シェル-コロナ型高分子ミセルを鋳型とする新しい中空無機微粒子の合成法を確立すること、(ii)その微粒子の種々の応用を検討することを目的とした。 平成18年度は本研究計画の2年目である。前年度は中空金微粒子の合成を試み、条件を種々に変えて実験を行ったが、直径10nm前後の通常の金微粒子のみが得られて中空微粒子は得られなかった。従って、中空金微粒子の問題はしばらく保留にしておき、平成18年度は下記のように中空シリカ微粒子の合成を試みた。 【1】高分子ミセル鋳型の調製 ポリ(スチレン-b-2-ビニルピリジン-b-エチレンオキシド)(略称:PS-b-PVP-b-PEO)をジメチルフォルムアミドに溶かした後、水に対して透析し、PSをコア、PVPをシェル、PEOをコロナとする高分子ミセルを得た。さらに、溶液をpH4に調整してPVPブロックを陽イオン化した。 【2】中空シリカ微粒子の合成と特性解析 前記の高分子ミセル溶液に、シリカの前駆体であるテトラメトキシシランをミセル溶液に加え、2日間撹拌してゾル-ゲル法によりシリカ層を形成させた。次に、500℃で4時間焼成して鋳型の高分子ミセルを取り除き、シリカの中空微粒子を得た。得られた中空シリカ微粒子を透過型電子顕微鏡測定で測定したところ、粒径は30nm、空洞径は11nm、シリカ層の厚さは10nmであった。この成果はJ.Am.Chem.Soc.誌に掲載された。今後、得られた中空シリカ微粒子について、表面修飾や薬物の徐法などの応用面での検討を行う予定である。さらに、同様の実験を他の無機材料についても行う予定である。
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