炭酸イオンのC=O結合の傾斜方向による方解石(CaCO3)の(10-14)面については、マクロ測定において比較する2つの結晶面が確実に同一平面上にのるように実験法を工夫し、摩擦の非対称性について再現性のある測定ができるようになった。大きな荷重をかけて摩耗させたときの表面を原子間力顕微鏡や電子顕微鏡で詳細に観察することにより、マクロの摩擦はナノスケールの場合と異なり、結晶面の滑りをともなうことが分った。有力な滑り面の傾斜方向の違いが摩擦の非対称性の原因であることが明らかとなった。 岩塩型結晶のうち、NaClの低指数面の摩擦については国際会議で招待講演を行い、論文発表も合わせておこなった(印刷中)。NaCl(100)面でのマクロの摩擦については同種のイオンが並ぶ[110]方向と、異種イオンが交互に並ぶ[100]方向の摩擦を比較した。摩耗のない条件で、予期した異方性が得られるのは湿度が高い場合であり、低湿度においては異方性が一定しなかった。この点はナノ測定と明らかに結果が異なる。マクロの摩擦で起こる表面の変化を調べた上で水分との相互作用を調べる必要が出て来た。 実用材料であるガラス状炭素について、試料の熱処理温度と摩擦係数の関係を調べた。高温で処理するほど表面に黒鉛層が発達し、熱分解黒鉛とほぼ同じ摩擦係数となった。実用化の目安とされる0.1以下の摩擦係数を得るには、2000℃以上の熱処理が必要であることが分った。この成果は2007年度の炭素材料に関する国際会議で発表する。
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