方解石(CaCO3)(10-14)へき開面における巨視的摩際の非対杯性は(0001)曲および{10-14}面における滑りによることが明らかになった。測定面と当該滑り面との交線と直交する向きの掻引により段差の大きな滑りステップを生ずることが分った。これは塑性変形に伴う滑りの理論と一致する結果である。ナノスケール摩擦とマクロスケール摩擦では応力の作用する面積の違いが大きく、スケールが大きくなると新しい摩擦のメカニズムが働くと考えられる。 ナノスケールとマクロスケールを直接比較するためには面積の大きな原子平坦面を作成する必要がある。食塩結晶については(110)面、(111)面、(113)面、(120)面を原子平坦化できることを明らかにした。方解石についても、へき開面以外に、(0001)面、(01-16)面を原子平坦化する方法を開発した。 複合材料の例としてカーボンナノファイバーを加えたフラン樹脂の摩擦と熱処理温度の関係を調べた。ファイバーは試料面内に配向させられることが分った。面内での掻引については摩擦の異方性が検出されたが、これはファイバーの向きによるのではなく、薄膜試料の作成時に樹脂が配向するためであることが分った。ファイバー添加により摩擦材としての特性は向上させられるが、熱処理温度を高くし過ぎるとファイバーは母材と一体となり、複合効果は失われる。
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