研究概要 |
1.はじめに,昨年度に引き続き2つのナノワイヤー超格子で欠陥層を挟んだ2重障壁構造を取りあげ,azimuthally symmetric torsional mode(略してASTモード)の解析を行った.昨年度に計算した透過率の計算によると、周波数ギャップ内に欠陥層に局在した振動モードと入射フォノンとの共鳴相互作用による共鳴ピークが見られた.この共鳴ピークはある臨界周波数以下には現れないことが明らかになっていたが,その原因はわかっていなかった。そこで今年度は,トランスファー・マトリックス法とグリーン関数法を用いて,欠陥層を1層有する無限周期のナノワイヤー超格子に生じる局在振動モードを計算した.その結果,臨界振動数の解析的表式を導出することに成功し,臨界振動数以下の領域では局在振動モードが出現しないことを明確に示すことができた.また,この臨界振動数以下では欠陥層内におけるフォノンの波数が虚数となること,この臨界振動数の出現はフォノンの半径方向の閉じこめの効果によるものであることを明らかにした.これらに結果に基づき,透過率の共鳴ピークが臨界周波数以下には現れない理由を物理的に説明することができた. 2.次に,ASTモード以外の振動モードに対する分散関係および透過率の定式化に取り組んだ。ASTモードに関しては、ポテンシャル関数法とトランスファー・マトリックス法が有効な計算手法であったが、ASTモード以外のモードに対しは、数学的な困難が生じるため、有効な計算手法ではなく、全ての境界条件を満たす解を構築することができないことがわかった。そこで,次のステップとして,XYZアルゴリズムと呼ばれる一種の変分法に基づく数値計算法が有用であることを確かめ,ナノワイヤー超格子に適用できる数値計算プログラムの開発を行った.
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