研究概要 |
1.半径が大きなカーボンナノチューブ(CNT)の固有欠陥を研究するため、グラファイト1層膜に相当するグラフェンの固有欠陥に対し、第一原理計算を行い、その構造、安定性、拡散障壁について、研究を行い、グラフェン多原子空孔の安定構造を明らかにした。 (1)大きな格子緩和により、5員環が生成することが明らかにされた。多原子空孔について、2,4,6が魔法数であると結論され、これらの魔法数を単純なモデルで説明するため、5員環の生成を考慮した、拡張されたダングリングボンドカウンティングモデルを提唱した。 (2)格子間原子や複格子間原子について、拡散障壁について計算し、格子間原子は、原子空孔より容易に拡散し、拡散ののち複格子間原子が生成すると、その構造は極めて安定であることが分かった。 2.CNTに鉄クラスターを含めた系をつくり、その電子状態と磁性状態を解析した。 (1)カイラル指数(9,0)のCNTに鉄ワイヤーを挿入して、フェルミ準位付近の電子状態、安定構造および磁気構造を明らかにした。これまで単位胞の大きさが小さいために、強磁性を示す系が得られていたが、単位胞を鉄4原子が入る大きさまで拡張することで、反強磁性的な磁気配列が安定であることが分かった。また、この安定な磁気配列では、隣り合う鉄原子が強磁性的な2量体を形成し、この2量体が反強磁性的に配列することが分かった。鉄原子間に働くCNTを通した反強磁性的交換相互作用は、CNT中の反強磁性的磁気構造をより安定にしていると考察された。
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