研究概要 |
メソ多孔体は原子スケールでは規則構造をもたないアモルファスの状態であるが,そのアモルファスがメソスケールの細孔構造を形成している。そして,この物質のメソ孔を利用した,吸着材,触媒,ドラッグデリバリーシステム(DDS)としての応用が期待されている。メソ多孔体のキャラクタリゼーションは,これまで,電子顕微鏡観察,電子線回折,X線回折などを駆使してなされてきたが,細孔の配列やおおよその形状がわかるものの,細孔壁の微細な形状や,更には細孔内に取り込まれた分子の構造情報についてはほとんど明らかにされていない。 平成17年度は,大きさがおよそ数nmの細孔を持つシリカ・メソ多孔体MCM-41およびMCM-48について放射光粉末回折データの測定を行った。また,窒素ガスやアルゴンガスの吸着状態でのその場測定を行った。そして,ガス吸着その場測定,多孔性材料の回折データの解析について種々のトライアルを行い,手法の改善を検討した。 実験は大型放射光施設SPring-8の粉末回折ビームラインBL02B2において,イメージングプレートを検出器としたデバイシェラー法により行った。ガス吸着は我々のグループで独自に開発したガス導入システムを利用し,BL既存の窒素ガス吹付け低温装置を組み合わせて,温度とガス圧力をパラメータとしたその場測定を行った。 得られた回折データは,ガス圧力増加に伴い,回折強度の変化が観測された。特に相対ガス圧力0.4付近には毛細管現象によると考えられる大きな変化が見られ,ガス吸着による回折強度変化を観測できたと考えられる。 また,メソ多孔体の形状を,細孔サイズ,細孔同士の間隔,密度などをパラメータとして解析的に表わし,回折強度のシミュレーションを行った。ガスを導入しない状態のMCM-41については,実験データとの比較検討を進めている。この部分については現在論文投稿準備中である。
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