研究概要 |
シリカメソ多孔体はメソスケールの細孔構造を持つアモルファス物質である。医薬品などの有用物質の分離.精製などの応用研究において,メソ孔内でのゲスト分子の構造情報は大変重要である。本研究の目的は,高輝度放射光回折実験とマキシマムエントロピー法(MEM)という電子密度イメージング手法を用いて,メソ多孔体に吸着されたガス分子の詳細な構造情報を得ることである。 初年度は1次元メソ孔をもつMCM-41の細孔形状を解析し,焼成前後の細孔の大きさや形状に関する情報を得た(J.Phys.Chem.B(2006))。今年度は3次元メソ孔を持つMCM-48の放射光粉末回折データのガス吸着その場測定を行った。 MCM-48のメソ孔は近似的に,いわゆるジャイロイド表面として解析的に表すことができるが,今後の多様なメソ孔形状解析に対応するため,ここではモデルフリーな解析法を適用した。フーリエ法を用いた従来の解析法で得たメソ孔の概形と,吸着等温線データから見積もられる細孔容積とを合わせて,結晶構造因子のスケーリングを行い,MEMによりメソ孔形状をイメージングすることに成功した。得られたイメージ図は従来法に比べて非常にクリアであり,これまでは細孔の大きさは小さめに見積もられていたと考えられる。この手法は,より複雑なメソ孔のネットワーク構造,さらにはメソ孔表面の微細構造の解析に有効であると期待される。 ガス吸着状態のデータでは,ガス圧力の増加に伴い,明瞭な回折強度の変化が観測された。このデータを解析し,電子密度の変化として,細孔壁への吸着の過程を観測することができた。すなわち,低圧部での単分子層吸着状態から閾値圧力における毛細管凝集,さらに飽和吸着状態に至る過程の吸着分子の構造情報を得ることができた。位相の取り扱いに今後検討が必要であるが,この手法はガス吸着状態の観測手法として有効であると期待される。
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