2次元に広がった厚さ10nm程度のシート状構造体が基板にほぼ垂直に成長するカーボンナノウォール(CNW)は、立ち並んだグラファイトの薄い壁と、その広い表面積が特徴で、ユニークな構造や良好な電気伝導性・熱伝導性を利用したデバイスへの応用が期待される。本研究では、ラジカル注入プラズマCVD装置を用いてCNWの形成を行い、CNWを中心としたカーボンナノ構造体を基盤とする次世代電子デバイスの開発の実現に向けて以下の知見を得た。 CNWはグラフェンシートの積層構造であり、シートに平行な方向への導電性が優れている。さらに、ナノチューブの直径と同程度の厚さを有するCNWのエッジは良好な電子放出サイトとなる。ラジカル注入を用いたプラズマCVD法では、原料ガスの種類や水素原子注入量を変えることによりCNWの厚さや壁と壁の間隔を制御することが可能で、形状の最適化と表面修飾により、ナノチューブに匹敵する高輝度・高効率電子放出源となることを示した。 また、CNWのナノインプリント応用に向けた検討として、シリコン酸化膜上にCNWを形成し、CNWをマスクとしてシリコン酸化膜のドライエッチングを行って、CNWの迷路構造の転写を試みた。CNWは実際には基板に対して必ずしも垂直ではなく、また厚さ方向では数10nmの起伏があるため、CNWは実際よりも厚いマスクとして働いた結果、40nm程度の厚さのシリコン酸化膜のナノウォール構造が得られた。 さらに、燃料電池電極への応用に向けて、CNW表面への白金ナノ粒子の坦持を行った。白金のレーザアブレーション、パルスアークプラズマによる蒸着、メッキ、および超臨界CVDを用いて比較を行った結果、有機白金を用いた超臨界CVDにより、粒径1-2nmの白金ナノ粒子を凝集することなくCNWの根本付近まで広く一様に担持させることに成功した。
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