細胞内での活性酸素等によるDNAの損傷の中でも、特に二本鎖DNAの切断は、ゲノム異常や発がん等の疾患を生じさせ、生命にとって重篤な障害を与える。しかしながら長いDNAの二本鎖切断反応に関する研究は、塩基の化学変化や一本鎖切断などに比べ、著しく立ち遅れている。その主たる理由は、ゲノムDNAのような長鎖DNAについては、二本鎖切断反応を調べるための実験手法が未確立であるためである。本研究では、主として蛍光顕微鏡を用いて、ゲノムDNAのような、巨大DNA分子(50kbp〜200kbp程度)の二本鎖切断反応の"その場"観察や、放射線照射後の二本鎖切断の計測を行った。 結果として、以下のような成果が得られた。 (1)抗酸化ビタミンをはじめとする種々の生理活性物質の二本鎖切断に対する保護作用を定量的に評価することができた。 (2)DNAの高次構造が、放射線よって引き起こされる二本鎖切断に対する感受性と密接に関わっていることを明らかにした。
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