研究概要 |
本年度は,超音波振動は,励振用の圧電素子を噴出ノズルヘッドの基体中に埋め込んだランジュバン型振動子構造を設計・作製し,これを40kHz付近で振動させることで,衝突焦点先端部で薄く引き延ばされた液体が微小液滴化することを促す方式をとった. 圧電素子としてφ15のPZTを用い,これをφ15アルミ合金でサンドイッチ構造にボルト締めすることで,縦寸34mmの円筒状にすることでランジュバン振動子とした.この振動子の前面に噴霧ノズルの中心部となるφ3円筒とさらにこの先端部である開き角55°の円錐形状を接続している.このノズル先端部と振動子の間はφ10の円筒でステップ状に接続した.これらの金属材質はアルミ合金とした.対応する想定固有振動数は40kHzである.超音波振動を励起する発振器としては,シンセサイザから発生する矩形波を,他励式発振器(10W)により増幅し,圧電素子に接続することで,超音波振動を発生させた. 前述の超音波振動ノズル専用の外周流体路を設計・製作し"噴霧ノズル"とした.噴霧ノズルとしての設計指針は,円筒+円錐形であり,高速高圧気体の流れが先端円錐部表面(液体路)に平行であり,高速高圧気体とこれによって加速される液体の衝突焦点が先端円錐部頂点に位置するように設計されている.このことにより高速高圧気体の流速を損じることなく,衝撃波の発生により効果的に微小液滴化が実現できる構造とした. 測定評価としては,大気中において超音波振動ノズル先端部の縦振動をレーザドップラ振動計にて評価した.その結果,7.5Wの投入で,最大変位速度1870mm/sが得られた.波形は安定した正弦波形状であった. 次に前述の超音波振動ノズルを用いて実際に噴霧を行い,超音波振動の有無が液滴微粒化に及ぼす影響を評価した.噴霧液滴の粒度分布評価には,レーザ散乱粒度計測法によるその場観察法を用いた.その結果,投入電力10Wで,大粒径領域の粒子分布数が低減することで,粒径分布幅が若干先鋭化する(幾何標準偏差が低下する)傾向があるものの,平均粒径としての微粒化はわずかに留まった(約7%).
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