研究概要 |
研究2年度である平成18年度においては、サブテーマである、「フォノニック結晶における表面導波路モードの探索とその伝播イメージング」を主とした研究を実施した。 異なる弾性体の複合周期構造であるフォノニック結晶は、完全ギャップの存在と、それを利用したナノ-マイクロ音響デバイスへの応用上重要である。本研究ではフォノニック結晶の表面に線状欠陥(導波路)を導入することにより、表面導波路内に束縛されて伝播するフォノンの探索を行った。フォノニック結晶としては、弾性的にソフトな母体(高分子固体)にハードなミクロン・スケールの円柱(金属)が周期的に配列した構造を対象とした。また表面は円柱軸に垂直に導入した。この系のフォノンには円柱充填率の広い範囲にわたり、完全ギャップが存在する。先ず、欠陥のない完全表面で、バルクフォノンのブランチの下に存在が期待される表面フォノンを探したが、固有なモードとして見いだすことは出来なかった。(しかし、いくつかの有限な寿命を持つ擬似表面フォノンのブランチは見いだされた)。次に、一列の円柱の並びを母体物質で置き換えることにより、線形導波路を導入し、表面と導波路に同時に束縛されて伝播する表面導波路モードを探した。その結果、これらのモードのブランチが、周波数について下から2つの完全ギャップ内部に共に見いだされた。それらのブランチの下にはバルクフォノンのブランチがあるため、これらの表面導波路モードに関し、安定性の確認が重要である。寿命の評価を行ったところ、上部のブランチ内に減衰率が千分の1程度にまで落ち込む周波数が存在し、この近傍の表面導波路モードは約千周期の距離を安定に伝播することが期待される。その確認のために表面導波路モードの伝播シミュレーションも行い、これを確認した。以上の解析は、FDTD法に基づき実行した。これらの結果については、Wave Motion(2007,in press)に論文を投稿し、すでに掲載が決定している。 上記の解析に加えて、別のサブテーマである、「ナノーマイクロ・フォノンキャビティーの設計」に関する予備的解析も行った。
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